敷地探しのご相談を受けた時から、Y様ご夫妻との住まい造りのお手伝いが始まりました。
幾つかの敷地をご覧になったある日、鎌倉の某所に良い土地が見つかりましたとお知らせを頂き、現地を見て検討したいので調べてほしいというご依頼を受けました。その敷地は鎌倉の奥座敷とでも言えそうな、前面に竹林のある小山があり、約40坪で南北に長く、北側に進入路のある敷地でした。西側は小高い法面があり、いかにも鎌倉らしい風情のある所でした。同時に何百年もの歴史を感じさせていました。
まず、敷地のことで意識すること、それは敷地の方位は勿論の事、日当たり、風通り、敷地の勾配、雨水、湧水の状況、又、切り土、盛り土による地盤の強度等です。特に鎌倉は湿度が高い特有の風土なので、これからの特性といかに共生していくか検討することからはじまりました。 近隣の方々にもこの地域の季節の変化による事柄等、ここの住人でしか判らないお話をお聞きして準備を進めました。
いよいよ家造りです。
Y様ご夫婦とは幾度かの打合せを重ね、納得されるまで話し合ってきましたので、設計、デザインはスムーズに進みました。一番のポイントは、この敷地の持っているポテンシャルを生かし、鎌倉の風土に合うデザインを表現することでした。自然環境に合う色、形、経年変化を楽しめる素材等、弊社が長年拘ってまいりました、人に優しくお住まいになる方の波長に合う素材をご提案致しました。
拘ることで、若干コスト高になりましたが、お住まいになって、生活する上で欠くことのできない事だったと、感謝のお言葉をいただきました。
次に谷間特有の、山からの湿度の高い風が通常では考えられない湿気を呼び込むという問題が生じました。湿度対策用として、基礎より防湿シートによる地盤との絶縁、ベタ基礎による湿気対策、高基礎にすることでなるべく地盤面より床を高くする、床下に湿気消臭用の備長炭を敷き壁面は通気壁面として、断熱工事は特に精度良く施工する等、色々検討しました。最終的に、内部仕様の壁、天井全てを自然素材の調湿性の高い塗り壁、板張りとした為、全室カビに悩まされることはないということでした。
それでも、入居一年目は北側の押入れの物が湿気たそうです。私共の大きな反省点になりました。